【かぼちゃの馬車】フリー戦略で考えたい事

【かぼちゃの馬車】WEB以外へのフリー戦略適用について考えたい事

名古屋市西区のWEB/ホームページ製作会社[Aki Web Design]です。
 
昨年末から女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」(運営:(株)株式会社スマートデイズ(旧スマートライフ) (東京都))の支払停止による騒ぎを多く耳にするようになりました。
 
私の身近にもオーナーとして当事者になっている者がおり、2017年10月の賃料減額通知前後からずっと本問題を注視しています。
 
そんな中、2016年に当時の同社社長である大地氏が書いた「家賃0円・空室有」でも儲かる不動産投資」を読んで、「ああ、これは理想とするビジネスプランに無理がある…」と感じました。今日はそのことを書きたいと思います。
 

 

1.かぼちゃの馬車はなぜ騒がれているのか

 

女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」とは

 
色々なところで騒がれているので、問題に関してはさらっと書きます。
 
「かぼちゃの馬車」とはスマートデイズ社が提唱する首都圏を中心に女性専用シェアハウスです。同ハウスは物件オーナーを見つけ建築から管理運営まで請け負う「サブリース」の形態で運営されていました。
 
「サブリース」とはいわゆる「また貸し」のことで、物件のオーナーがスマートデイズに物件を貸出、スマートデイズが一般顧客=入居者に転貸します。その際、オーナーは一定額(著書によると利回8%相当)を賃料=サブリース料としてスマートデイズから受け取る形となります。
 
詳しいことは各種の不動産投資ブログに任せますが、現在の不動産投資の相場からすると、土地から取得した新築の物件で利回8%(建築費+土地で1億円なら年間800万円がもらえるということ)は、中々に魅力的な数字で、多くのオーナーが「かぼちゃの馬車」に賛同することとなりました。
 
結果、スマートデイズ社は設立わずか数年の2017年3月期で売上高316億9664万円(東京商工リサーチ)を計上するまでとなり、上述の著書では月に50棟が新築されていたといいます。
 
そのような急拡大、事業コンセプト(後述)の目新しさなどから露出も増え有名になってきたところで、2017年10月支払が滞ってしまいました。(8月頃から元々関係の合った(株)オーシャナイズと資本提携をしたり少し不思議な動きはあったようです。)
 
2017年12月になってスマートデイズ社はオーナー達に説明会を開き、今年に入ってオーシャナイズの菅澤氏に社長を交代、再建を目指しているという状況です。
 
※予断ですがオーシャナイズの菅澤氏は同社がタダコピを始めたばかりの頃、一度お会いしたことがあり、大勢が集まる場で1分にも満たない話でしたが、同世代でもうこんなにしっかりした考えを持っている人がいるのか、と衝撃を受けたことをよく覚えています。火中の栗を拾う形になりましたが、是非うまく収拾されることを願ってます。
 

「かぼちゃの馬車」のオーナーの多くは一般のサラリーマンだった

 
さらに、オーナーの多くは一般のサラリーマンだったと言われており、実際に私の知人も都内勤務のサラリーマンでした。昨今の金融緩和で一般のサラリーマン投資家が増えたことは各方面で言われていますが、その人たちがまさに当事者となったのです。
 
スマートデイズ社は宅建業者として、土地の取得から物件のプランニング及び設立後の運用までを一括してプランにしています。さらに同プランに賛同した銀行と組んで融資の斡旋までを行うため、収入や年齢(いわゆる属性)の一定条件を満たす者は、ほぼお任せで「かぼちゃの馬車」のオーナーになることが出来ました。
 
ただ、当たり前ですが銀行で融資を受ける以上は、その融資された金額(+金利)を返済する必要があります。その返済の原資としてオーナーがアテにしていたのが上述のサブリース料です。返済原資が滞ったオーナーが銀行への返済に苦慮するのは言うまでもありません。(しかも斡旋していたのが高金利で有名な某銀行だったとか…)
 
オーナー達は勿論、融資を行った銀行からしても不良債権化されては困ります。そのため現在各社間で調整が行われているのですが、関係者の人数や金額が大きい問題だけに、騒ぎも大きくなっているのです。
 

2.かぼちゃの馬車のビジネスプランのどこに問題があったのか

 
前置きが長くなりましたがここからが本題です。
※今回のお話はビジネスモデルの考察が主旨です。
 

脱・不動産を目指しフリー戦略を採用しようとしたかぼちゃの馬車

 
著書によると「かぼちゃの馬車」は入居者の家賃が0円でも投資家に利益を還元できる新しいサブリースを事業コンセプトにしていました。
 
仕組みとしては、上京する女性に仕事を斡旋し、斡旋先からの仲介料>家賃相当分となれば儲かるというシンプルな物です。(他にも企業からのモニター依頼など人を抱えていることで発生する副収入があるとのこと。)
 
オーシャナイズ社の事業である「タダコピ」(学生向けの事業。コピー用紙の裏に広告が入ることで学生は無料でコピーを利用できる。)と同じく、広告料で成り立たせるビジネスモデル、いわゆるフリー戦略というものですが、不動産賃貸業という業態でそれを目指した点にインパクトがありました。
 
一般に数万円にもなる「家賃」がタダになるということで、うまく実現しつづければ、たしかに常識に一石を投じる事業となったでしょう。(だから賛同したオーナーが多かったとも言えます)
 

フリー戦略は原価の低いサービスで実現されやすい

 
ただ、家賃という高額なものをフリーで提供するためには、それ相応の広告費を稼がねばならず、そのような収入媒体は限られてきます。
 
一般論としてフリー戦略は、原価が低く、スケールメリットを得られるものとの相性がいいと言われます。たとえば電子ブックなどのデータやソフトウェア、体験型のサービスなどです。
 
前2つは一度作ってしまえば、開発費がかからないので損益分岐を超えた分は丸儲けになります。よってフリーで配布してしまっても懐は痛みません。
 
サービスも労働者や施設が空いている時間を活用することで生まれる場合、どうせかかっている経費を使用して新たに収入を得る動きとなりますので、同じく懐が痛みません。
 

「かぼちゃの馬車」はフリー戦略に必要な原価がかかりすぎている

 
しかし「かぼちゃの馬車」の様に物件を新築し、人集めに広告費/運営費をかけ、オーナーへのリターンも準備するとなると話が違います。原価はそれなり以上にかかり、それ相応のコストを回収する広告媒体を準備し続けるのは非常に骨が折れます。
 
しかもローン返済期間、不動産の耐用年数分の稼働だけを考えたとしても、20~30年という長期スパンに渡っての運営が必要となり、その間一度もコスト割れを起こさないというのは、至難といえるでしょう。
 

「かぼちゃの馬車」における一番の問題点

 
勿論、同社もそれを理解していたので、コストを回収できる広告媒体として「人材斡旋」を選択し、計算上は十分まわるような仕組みを準備したのでしょう。
 
著書によれば短期で退去してもらい、回転率が上がる仕組み(斡旋は就職時の単発収入となるので、早く出てもらったほうが利益になる。通常不動産では長く入居してほしい物であるため、逆手の発想です。)を準備し、若い女性にターゲットを絞ることで斡旋しやすさ、物件の管理の簡易さを上げて、原価の高さを克服しようとしています。
 
著書を読んだとき、初見ではよく考えられているな、と思いました。ただ、今の状況から後付けで考えると急拡大を求めたことがよくなかったと考えられます。
 
「かぼちゃの馬車」の事業はより小さな絞られたターゲットに向けて提唱されるべきでした。
 
確かに一定のスケールがあれば、人を抱えているということで人材斡旋を行う会社として有利で、様々な会社と提携しやすく、またモニター依頼なども増え広告費を得やすくなります。
 
しかしその反面、その分母を賄うためには、募集条件をある程度のレベルまで緩和し、該当者を増やす必要があります。結果、抱える人の平均値※は下がっていきます。
 
ここでいう平均値とは就活市場における価値という意味で、例えば就活市場で求められる特殊な資格を持つ人だけが集まる場所を作れば、単価を高く設定できますが、中々集めることが出来ず、小規模で募集をせざるを得ません。
 
実際「かぼちゃの馬車」が条件としたのは「女性」という点のみでした。
 
平均年齢は不明ですがシェアハウスに入る人たち=若者と仮定すると、東京都の20代女性女性平均年収が356万円(http://heikinnenshu.jp)、さらに初年はもう少し下がると仮定して300万円、人材紹介の報酬として30%を得たとしても100万円にも満たない金額となります。
 
人材斡旋は求職者の要望を聞き、業界事情などに精通しつつコンサルをすることが必要です。また企業側の募集動向を常に把握しなければいけなく、人数が増えれば運営にかかる負担も増します。
 
その金額で半年分の家賃、運営経費に加え、あっせんの手間賃まで賄うのは中々大変です。さらに急拡大に伴い運営スタッフも増員が急務だったでしょう。人材紹介業ではコンサルのレベルが売り上げを左右するので、スタッフの質も大事ですが、今の売り手市場の世で質の高いスタッフを確保し、人材紹介の拡大を行いながらシェアハウスの販売/運営を並行で行うにはかなりの経営手腕が求められます。
 
スマートデイズ社も最初は通常のシェアハウスとして家賃をとり運営しつつ、満を持して0円という理想を実現する絵図を描いていたようですが、それでも拡大に間に合わなかったというのが今回の実情でしょう。
 

3.かぼちゃの馬車はビジネスプランをどう組み立てるべきだったのか

 
今回の窮状を見て上での後付けの話ではありますが、上述のように「より狭い条件に合致した人材のみをターゲットにする家賃0プラン」を「小規模で」運営すればよかったかもしれません。
 
上述のようにコンサルタントの質を落とさず運営が黒字になる範囲を見極めながら、斡旋でより利益の出る高単価の人材のみを入れるハウスを運営し、少しづつターゲットを広げ、実績を積んで拡大をしていくのであれば、家賃0は実現できた可能性はあるでしょう。
 
勿論、人材が絞られ高度になる分、物件への要求水準が上がり建築単価が上がるかもしれませんし、人がいない分入居者募集も苦戦するかもしれないという懸念はありますが、どちらもクリアできるターゲットを探すことに注力し、クリアできなければ事業をやらないという決断をする必要があります。
 
また、目指す拡大規模が先にありきの場合は、なかなか目標に届かず歯がゆい思いをすると思いますが、知人の様にオーナーがいてこその事業となるわけですから、より慎重に進める必要があったと思います。
 
家賃0のシェアハウスは究極的には会社の寮と同様に、住むことでその分のプラスが広告主及びオーナーにも還元されている状態です。
 
例えば、1階に塾のような共有施設を設け、学生及びその親を集める。そこに住人である超有名大学の学生が教鞭をとることで家賃を割引く、とか、リゾート地の物件に無料で住まわせる代わりに情報をSNSにUPすることを条件にするとか、より限られた範囲であればすでに近いアイディアはすでに実現されており、やりようがあったことでしょう。
 
WEBの世界では当たり前のこととして受け入れられている「フリー」戦略ですが、異なった業界への活用はかぼちゃの馬車の事例に学ばねばいけませんね。
 

余談.エムアンドエムグラマシーも破綻の模様…

 
ちょうどこの記事を書いているときに、シェアハウスを中心に民泊や滞在型スタジオなどの企画運営を手掛け、板橋区や川崎市、さいたま市のシェアハウスや24時間演奏可能な滞在型スタジオをサブリース形式で展開していたエムアンドエムグラマシー(株)(東京)が破たんというニュースも入ってきました。
 
こちらは通常形態、家賃を取る形での運営でしたが、入居状況が良くなかったようです。 
かぼちゃの馬車と同じく、サブリースを返済原資にしていたオーナーたちは大変苦慮することでしょう。投資は自己責任とはいうもののお気の毒です。なんとかいい形で解決できることを祈っています。
 
今日はここまでです。また次の更新でお会いしましょう。
 
ひろたか

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